IS-ISではルート計算を行うために隣接情報をLSPで交換します。ここでは隣接関係からどのようにLSPが作成されるのか、レベルごとに構造と関係を説明します。
下図のIS1の送信するLSPについて考えてみます。IS-ISは隣接関係を持つISに対してLSPを送信します。そのためIS1は隣接関係を持つIS2に対してLSPを送信することになります。この時のLSPがどのようになっているのかを見ていきます。
IS1が作成するLSPはIS1自身のLSPと疑似ノードのLSPの2つです。IS1自身のLSPはISが誰と隣接状態にあるのかを表すLSPで、疑似ノードのLSPはブロードキャスト回線に接している場合にDISが作成するLSPです。IS1はES1との接続にブロードキャスト回線が使われていて自分以外にISが存在しないため、DISとなり疑似ノードのLSPの作成を行います。
IS1自身のLSPには下図で示した疑似ノードに対する隣接(1)とIS2に対する隣接(2)が含まれることになります。また図には示していませんが、IS1自身に対する隣接も含まれます。
IS1がDISとして作成する疑似ノードのLSPには疑似ノードが接するIS1(3)とES1(4)の隣接が含まれることになります。
この2つのLSPとその隣接情報を表したものが下図になります。右の番号は上図の矢印の番号と対応しています。LSPの構造はISや疑似ノードが持つネイバーIDとメトリックの集まりに対してLSP IDが付与される形となっています。この図はLSPのパケットフォーマットを表していますが、すべてを載せると煩雑になるため代表的な部分だけを抜き出しています。
上図の各項目は以下の意味を持ちます。
LSP ID
LSP IDはLSPを識別するためのIDです。付与されるLSP IDは下図のようにソースID(Source ID)に疑似ノード ID(Pseudonode ID)とLSP番号(LSP Number)をつなげたものです。ソースIDはISに付与されたNETからArea AddressとSELを省いた部分、疑似ノードIDはそのLSPがISのものか疑似ノードのものかを識別するためのID、LSP番号はLSPが複数に分かれた場合に識別できるようにする0から始まるシーケンス番号です。LSP IDは表現がNSAPアドレスに似ていますがSELは含まれず別物です。
フィールド | 長さ | 説明 |
Source ID | ID Length | LSPを作成したISのシステムID |
Pseudonode ID |
1オクテット |
このLSPが疑似ノードのLSPであるかどうかを判別する番号。DISのLAN IDと同じ回線IDが入ることになるため疑似ノードのLSPは0以外、通常のISのLSPは0となる。ポイントツーポイント回線の場合は常に0。LAN IDと回線IDについては「隣接関係」のページを参照 |
LSP Number | 1オクテット | 0から始まる番号。LSP番号0のLSPは必ず存在する |
Attached(ATT)
Attached(ATT)はレベル2サブドメイン(レベル2ネットワーク)に到達できることを示すフラグです。AttachedフラグがTrueの場合はこのLSPを送信したISを通じてレベル2に到達できることを示します。
エリアアドレス
エリアアドレスはISの存在しているエリアを示します。
ネイバーID
ネイバーIDは隣接相手を識別するためのIDで、自分以外のIS(LSP ID)の主観的な呼び方です。自分に隣接するISのLSP IDをネイバーIDと呼びます。
メトリック
メトリックは隣接に到達するためのコストを表します。この値は相手からの通知によるものではなく、IS自身に設定された値がインターフェースに適用された数値です。メトリックは4種類ありますが既定はデフォルトメトリックです。ここではISの隣接に対してはデフォルトメトリックの既定値(20)を使用しています。自分自身に対するメトリックと、疑似ノードが持つ隣接のメトリックは0となります。
有効期間とシーケンスナンバー
図には示していませんが、LSPには有効期間とシーケンスナンバーも含まれます。有効期間が切れるとLSPは無効扱いとなります。シーケンスナンバーはLSPのバージョンを表します。
レベル2のLSPもレベルごとにLSPが分かれる事以外は基本的にレベル1と同じです。ここでは下図IS4の作成するレベル2のLSPを見ていきます。
IS4の作成するLSPは下図のようになります。IS4はL1L2 ISであるためレベル1とレベル2のLSPを作成します。レベル1のLSPとしてブロードキャスト回線の疑似ノードに対する隣接(1)を作成します(IS4の接続するブロードキャスト回線のDISはIS2である想定です)。このLSPはエリア内に対して送信されるため、IS5には送信されません。レベル2のLSPとしてIS5に対する隣接(2)を作成します。このLSPは同じレベル2のIS5に対して送信されます。
IS4の作成するLSPを表したものが下図になります。下図の上はレベル1のLSPでブロードキャスト回線側に送信され、下はレベル2のLSPでIS5に送信されます。レベル2のLSPもレベル1と情報構成は同じです。
レベル1のLSPの構成は上で説明した通りですが、AttachedがTrueになっていてIS4を通してレベル2へ行けることを示しています。このLSPをエリア内のISが受け取るとIS4経由でレベル2サブドメイン(ほかのエリア)へ到達できると認識します。
レベル2のLSPの構成もレベル1と基本的には同じですが、レベル2のLSPにはESネイバーフィールドが存在しません。このLSPをIS5が受け取るとエリアアドレスが異なるため49.0001宛てはIS4に対して送ればよいことを認識します。
LSPの各項目はレベル1と同じであるため割愛します。