Integrated IS-ISのLSPの作成について説明します。IS-ISからの一番の変更点であるIPに対応したことによって、IPの到達可能性情報をどのように扱うかを焦点にしています。
下図のネットワークにIPサブネットを割り当てた環境でIS1の作成するLSPを見ていきます。
下図はIS1が持つ隣接関係を表したものです。IS1はレベル1のISであるためレベル1のLSPのみの隣接関係を持っています。IS1が作成するのは大きく分けてIS1のLSPと疑似ノードのLSPに分かれます。IS1のLSPはIS1自身が持つ隣接を表すためのLSPで、下図ではIS1から外向きの矢印(1~4)がLSPのエントリー対象となる隣接です。疑似ノードのLSPはブロードキャスト回線でDISが作成するLSPで、下図では疑似ノードから外向きの矢印(5)がLSPのエントリー対象となる隣接です。IS1は10.0.1.0/24の設定されたブロードキャスト回線で唯一のISであるためDISとなり、この回線の疑似ノードを作成してほかのISに送信します。
下図はIS1が作成するLSPの主要部分を表したものです。IS1のLSPの隣接エントリーはOSIのIS-ISで作成されるLSPに比べると複雑になった感じを受けますが、各IPプレフィックスはESに置き換えて考えることができるため概念的に同じです。上図では10.0.1.0/24と10.0.2.0/24の2つのIPプレフィックスが存在しこれをESと同じ扱い(ルート計算を行う上で同じ扱いでも計算ができる意味)としてIP内部到達可能性情報(3, 4)を作成します。そして各ノードへの隣接はHello PDUの交換で作った隣接(1, 2)をそのままISネイバーとして使用します。ESネイバーはIS1自身を示しています。IPインターフェースアドレスにはLSPで使用する場合はISの持つ回線の一つ以上のIPアドレスを含めることになっています。IPインターフェースアドレスはIPアドレスで各ISを識別するための役割を持ちますが、OSIベースで行われるLSPの交換やルート計算では意味を持たないため使用されません。
IS1の作成する疑似ノードのLSPはIS1が接続するブロードキャスト回線の隣接ノードを表すものです。このLSPにはこの回線で唯一接続しているIS1のLSP ID(5)が含まれています。疑似ノードはこの回線に隣接するシステムを示す役割だけを持つため、IP内部到達可能性情報は含まれません。ただし、このブロードキャスト回線にはESが存在せずISが1つだけしか存在しないため、この環境においては疑似ノードを省いても成り立ちます。その場合5と1の隣接はなくなることになります。
下図IS4の作成するLSPを見ていきます。レベル2ではエリアの境界にあることでIS-ISとしてはエリア情報が重要ですが、IPサブネットはエリアとは関係なく存在するためレベル1のISと同じように自分の直接接続している隣接とネットワークを対象としてLSPを作成します。
レベル2のISであるIS4の隣接はレベル1としての隣接とレベル2の隣接の2つを持ちます。IS5とはエリアアドレスが異なるためレベル2の隣接のみの関係を持ちます。ブロードキャスト回線はDISがIS2になっているためIS4は疑似ノードへの隣接のみを持ち、別にESとしての扱いで10.0.3.0/24への隣接を持っています。
IS4ではレベル1のLSPを作成しブロードキャスト回線へと送信します。このLSPはIS5には送信しません。内容は前に説明したとおりです。
IS4はレベル2のLSPを作成しIS5に送信します。各項目の意味はレベル1と同じになります。
レベル2のLSPは自分が持っているIPプレフィックスに加えてエリア内の各ISから受信したIPプレフィックスを追加して送信する必要があります。IS4では初めに上のLSPを送信しますが、その後エリア内のLSPが伝搬されると下図のように自分だけでは知りえないIPプレフィックスを追加してIS5に対して送信します。